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◇ ◇ 君の手 ◇ ◇

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定例会議が行われ、砂隠れの風影が
ここ、木の葉を訪れたのは昨日の事。

前々からこの機会を楽しみにしていた火影は夜の宴を盛大に行い、
ついにその日は我愛羅に会うことができなかったナルト。

けれど…

「今日はウチに泊まれるって言ってたよな」

手間取るかと思われた任務も意外にアッサリと終わり
今は自宅で部屋の片付けをやっているナルトは
先ほどから調子っ外れな鼻歌など披露してご機嫌だ。

「会うのは久しぶりだってばよ。
えと、前の任務の時だから…半年?いや、もっとかな?」
額に浮かんだ汗を拭いながら手を止めて指折り数える。

「そんな遠慮の無い独り言を言う奴だったか?」

ふいに耳に飛び込んだその声に弾かれ
勢いよく振り返ると、焦がれに焦がれた人が立っていた。

「我愛羅!」

どうやって入ってきたのだとか
黙って人の部屋に上がりこむなとか
言いたいことは数々あれど
とりあえずはその人に飛びつくのが先だろう。

縋るように首に手を廻せば
恐ろしいほどすんなりと言葉が出てくる。

「すっげー…会いたかったってば…」

肩に心地よい重みを感じながら
飛び込んできた身体を受け止めると我愛羅の顔が綻ぶ。

見る人が見なければ解らないほどにうっすらと。

「元気そうだな」
我愛羅がナルトの身体を抱きしめながら呟くと
久しぶりの声音にナルトの鼻の奥がツンと痛む。

「うん、」
他に答えようもあったのだが、これ以上の言葉を紡げば
言葉だけじゃなく涙までも溢れそうで
ナルトは短い返事を返すだけで精一杯だった。



*****



「そんなに泣き虫だったとは…知らなかったな」
我愛羅がからかいを含んだ視線を投げる。

「泣き虫っていうな! 誰のせいだってばよ」
プイと横を向いて思い切ったふくれっ面をしているナルトを
愛しげに眺める我愛羅。
その顔がどんなに穏やかなものか…横を向いているナルトには
見えるはずもない。

我慢していた熱いものを
いとも簡単に溢れさせた我愛羅のヒトコト。

『会いたかったのはお前だけじゃない』

囁かれるようなそれが合図のように
ボロボロと流れる涙が悔しかった。

やっとの思いで涙を止めた頃
意地悪に響く我愛羅の声が、ナルトをふくれっ面にした。

横を向いたまま、チラッと我愛羅を盗み見る。
カチリと交わる視線と薄く笑んだ我愛羅の口元。

「今日は、と、泊まれるんだろ?
オレんち何もねーから…買い物行くってばよ!」
我愛羅に見つめられ、顔が火照るのを自覚しながらも
それを誤魔化す為に常よりも大きな声を出してみる。

掃除道具をバタバタと片付け、我愛羅と二人で部屋を出る。

鍵をかける瞬間
(何か、一緒に住んでるみてぇ)
そんな事が脳裏を過ぎり、ナルトはひとり頬を染めた。



*****



買い物をする前、木々の匂いがムンと立ちこめる森に入り
苔の生した岩に腰かけ何もない時間を過した。

今日の任務で膝を擦りむいたこと。
チョウジのお菓子を取り上げて、
危うく半殺しにされそうになったこと。
部屋から見る星は、夏よりも冬の方が綺麗だということ。

なんの繋がりもない事をただ話すナルト。
それに短い返事をしながら静かに耳を傾ける我愛羅。

楽しい時間は瞬く間に過ぎるもの。

随分と傾いてきた太陽に気がつき
「買い物して帰るってばよ」
そう言ったのはナルト。

ビニール袋二つ分の食料を買い込み
ナルトの部屋へと足を進める二人を
オレンジ色したでっかい夕日が照らしている。

ビニール袋を両手にぶらさげたナルトが
我愛羅の1歩先を元気に歩きながらその袋をぶんぶんと振り回す。

スッと視界の端に我愛羅の姿を捉え
隣に並んだのだな、と思えば
ナルトの片手から袋が取り上げられる。

「お前に持たせていると、危なっかしい」
ボソリと呟いて歩き出す我愛羅の手には
なんとも不似合いな買い物袋がひとつ。

「ヘヘッ、ありがと」
不器用な優しさに自然と顔が弛んでしまう。

「家に帰ったら先に風呂にするってばよ!
オレってば、任務と掃除ですっげー汚れてっから」
「俺は腹が減っている」
「少しぐらい我慢できるだろ?」
「無理だ」
「…お前…我が侭だってばよ」
「そうか?」

ごちゃごちゃと話しながらの帰り道。
二人の姿は段々と小さくなって
オレンジ色の中に溶けていった。




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